【羊肉生産へのこだわり】地元の特産品を活かした取組みと持続可能な農業への挑戦/北海道滝川市(ファームファイル03/FarmFile03)
北海道の羊肉産業を盛り上げる滝川市の「松尾めん羊牧場」にこだわりや、放牧のノウハウを伺いました。
滝川市の特産品を活かした取組みや美味しいお肉を追い求める姿に密着。
佐藤牧場長より、農業者への熱いメッセージをお届けします!
目次
牧場を始めたきっかけは「町の歴史」
松尾めん羊牧場がある滝川市はかつて、北海道における羊生産の中心地でした。
佐藤牧場長は、牧場を始めた当時を振り返ります。
「実は、滝川っていうのが北海道で一番羊の生産が古い町なんです。当時で、110年以上続いていたので。」
転機が訪れたのは、2010年。
滝川市にあった畜産試験場が、十勝の新得にある試験場と統合することになりました。
「やめてしまって、誰もやらなくなってしまったら、そこで羊の生産の歴史がストップしてしまう。」
「なんかそこで、歴史が途絶えちゃうのもやだなと思って。」
意を決して、会社に相談を持ち掛けたそうです。
「社長に相談したところ、じゃあうちでやりましょうかと言ってくださって。
そこで始まったんですよ。」
現在は、7.5haの放牧地で80頭の繁殖羊と子羊を合わせて、
240頭のサフォーク種を飼育しています。
フェンスもないゼロからのスタート 苦労を乗り越えた現在
「やるとなったときに、当然ここ滝川でスタートしよう、ということになりました。
ところが、当時フェンスとかも全くなくて。」
しかも、牧場が高原にあるため、冬季間の風雪が非常に厳しい環境でした。
「そんなときに、ファームエイジさんで、電牧(電気柵)もそうなんですけど、フェンスを冬も外さなくても大丈夫という話を聞いて。
それで導入しようということになって。」
・フェンスについては>>> こちら
(ニュージーランドの伝統的なフェンス「トラディショナルフェンス」)
また、血統にも悩まされました。
「もともと羊って、北海道が有名なんですけど、頭数的にはすごく少ないんですよ。」
松尾めん羊牧場にいる羊は、サフォークという種類です。
顔と手足が黒いことが特徴の肉用種ですが、頭数としては
全体の半分くらいしかいないそうです。
「そうなると、近親っていうか、血が濃くなっちゃうんですよね。」
結果的に、せっかく大きく育つはずのサフォークも、小ぶりになってしまったそうです。
考えた末、海外から種羊やメスの羊を入れることにしました。
そうすることで、体型は徐々に改善されてきたそうです。
「今まで日本にはいなかった血を入れて、新しい血のサフォークの群れを作っていきました。」
数えきれない苦労がありましたが、
その苦労を一つずつ乗り越え、松尾めん羊牧場の今があります。
そこには、佐藤牧場長の確かな熱意があったからでしょう。
ヒツジを飼養する上でのこだわり 草地管理も徹底
「ルーティン作業としては、朝と夕方の配合、餌やり、途中で水の補充だとか干草の補充をしてます。」
放牧をしている際も、羊の管理を行います。
朝必ず放牧している羊の数を数えたり、足を引きずっている個体がいないか、などをチェックするそうです。
また、放牧地の草地管理にも力を入れています。
松尾めん羊牧場では、草の状態を見て放牧する牧区(場所)を変えていきます。
その際に、ライジングプレートメーターを活用しています。
「うちは毎週日曜の午前11時って決めてるんですけれども、毎回各牧区を測って、移動する牧区を決めて、(羊を)入れてます。」
ライジングプレートメーターは、放牧地を歩きながら、牧草の乾物収量の推定値を算出することができます。
ニュージーランドでは週に一回、すべての放牧地をこのツールを使って収量調査を行い、放牧と草地管理を行います。
参考商品
地域社会と一体となった循環型農業を目指す
北海道は雪が降るため、放牧できる期間は限られています。
羊だけでなく、牛も、冬季間は干し草や穀物で育てる必要があります。
ここにも、松尾めん羊牧場のこだわりがあります。
「せっかくここ滝川でやるんで、滝川産の米だとか、小麦、こういったものを与えて育ててみようということで。」
飼料米を作ってもらったり、売り先がなくなった小麦などを購入するなど、
なるべく地域資源を活かそうと、取り組んでいらっしゃいます。
また、それらを還元したいと語ります。
「当然たい肥ができますが、それは近隣の農家の方にお譲りして、循環型の農業というか、そういうのを目指してやっています。」
まだ途中 と語りますが、佐藤牧場長の目線は、
しっかりと未来を見据えているように感じました。
これから畜産をやりたい方へのメッセージ
「好きはものの上手なれ、という言葉があると思うんですけど、
まずは、やりたい、好きだっていうのが一番大事だと思うんですよね。」
佐藤牧場長は力強くお話ししてくださいました。
「そういう方になるだけ、指導含めて協力できることは協力していきたいです。」
また、羊牧場でもあり、羊肉生産に長年携わっていた会社だからこそ、できることがあるのではないか、と語ります。
「一番心配な売り先がないとかいうのは、今までずっと羊を取り扱ってきた松尾だからご協力できる部分もあると思うので。
羊をやりたいっていうところには、どんどん協力していきたいと思っています。」
滝川市の歴史を継承するところから始まった松尾めん羊牧場。
苦労を乗り越え、地域が循環できる羊肉生産の輪は、
これからも大きくなっていくことでしょう。
ファームエイジもそのお手伝いができればと思います。
・松尾めん羊牧場 について
〈公式ホームページはこちら〉 https://www.matsuo-sheep-farm.jp
〈facebook〉https://ja-jp.facebook.com/MatsuoSheepFarm/
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