【放牧農家必見】牧草おすすめ3選!(種類、選び方から管理方法まで解説)
放牧農家において、牧草は家畜に与える餌として、とても重要です。
言い換えてみれば、この選択肢を間違ってしまうと、放牧のメリットを最大限に発揮できません。
この記事では牧草の種類や選び方、管理方法など、基礎的な知識を中心にご説明します。
目次
1.牧草とは
1-1.牧草(ぼくそう)とは
家畜に与えるための餌(飼料)として育てられた、草のことです。
牧草を育てるための場所(あるいは育っている場所)を牧草地(ぼくそうち)と呼びます。
1-2.牧草と牧草サイレージの違い
牧草は一般的に「青草」とも呼ばれ、牧草地に育っている草全体を意味します。
一方、牧草サイレージは、その牧草を刈り取った後、ロール状にラップされて、乳酸発酵させた飼料を意味します。
つまり、どちらも家畜に与える餌ですが、その成り立ちに違いがあります。
1-3.「放牧草?」「採草?」 目的によって異なる牧草の呼び方
家畜の飼養形態によって、牧草の呼び方は、いくつかに分類されます。
例えば、舎飼いの農家さんの場合、牧草は、ほとんどがロール状にされて、牧草サイレージになります。
牛などの家畜を基本的に畜舎(家畜が生活する小屋、施設)で飼っていますので、家畜に与えるときは、サイレージを畜舎に運んで、ほぐしながら給与します。
このように、牧草を採取する(サイレージにする)ことを目的とした牧草地のため、「採草地(さいそうち)」と呼ばれます。
一方、放牧している農家さんの場合、夏は家畜を牧草地に出して、草を与えます。北海道ではよくみられる牧歌的な風景ですよね。このように、放牧を目的とした牧草地を「放牧地(ほうぼくち)」と呼ばれます。
さらに、農家さんは牧草の生育状態や、家畜の頭数、経営状況などに合わせて、採草地と放牧地を兼用にさせた「兼用地」を設けたりするなど、できるだけ効率的に牧草を使えるよう、日々工夫されています。
2.放牧でよく使われる牧草3種
ここでは、北海道で主にみられる牧草を3種類ご紹介します。
2-1.ペレニアルライグラス【イネ科】
- ・イネ科の多年草
- ・原産国:ヨーロッパ
- ・特徴:高さ20~40cm程度。
- ・メリット:放牧用に広く使われる。葉に光沢があり、太陽光に当たるとしばしば光って見えることがある。
再生力が強く、秋口でも生育が良いため、放牧などの短草利用に最適な牧草。
タンパク養分が高く他のミネラルも豊富である。 - ・デメリット:土壌凍結に弱い
2-2.オーチャードグラス【イネ科】
- ・イネ科の多年草
- ・原産国:ユーラシア
- ・特徴:高さ50~120cm程度。
- ・メリット:再生力が強く、秋口でも生育が良い。放牧などの短草利用に向いている。養分やミネラルも豊富。追播にも向いている。
- ・デメリット:土壌凍結に弱い
2-3.クローバー【マメ科】
- ・マメ科
- ・原産国:ヨーロッパ
- ・特徴:他のマメ科同様に根粒菌を持っていること。空中窒素を固定して植物の利用できるアンモニアに変えるという重要な機能を持っている。
- ・メリットとデメリット:主に赤クローバーと白クローバーが広くみられる。 いずれも品種が多く、越冬性など品種間の差が大きいため、播種する草地の土壌や環境、他の草種との相性などを踏まえた上での品種を選ぶことが必要。
3.なぜ牧草をきちんと選ぶ必要があるの?
3-1.生育できる気温や環境がある
日本は南北に長い列島のため、気温や雨量など生育環境によって、牧草を選ぶ必要があります。
例えば、暖かい地域で生育する牧草を、北海道のような寒冷地で育てようと思っても、
寒さに耐えれず、うまく根付きません。
3-2.種類が偏ると家畜に影響を与える
例えば、クローバーなどのマメ科をとりすぎると、異常発酵により腸内でガスがたまり、消化に影響を与えてしまいます。
ひどい場合は、鼓腸症(こちょうしょう)になってしまい、家畜が死亡するリスクもあるので、与えすぎには注意が必要です。
4.意外と忘れがち?放牧地をフル活用するための「野生動物対策」
4-1.農業被害の約8割が牧草!
牧草の被害というと、あまり実感がわかない方が多いのではないでしょうか。
実は、北海道におけるエゾシカの農業被害の中で最も高い割合を占めているのが、牧草の被害です。
数年前に、北海道東部のある地域において、エゾシカの牧草被害の推定調査を当社も連携・協力のもと調査が行いました。
その結果・・・10aあたり牧草ロール1個の損失が推定されました。
例えば、5haの牧草地・ロール1個当たりの販売価格8000円とした場合、被害ロール1個/10a×50倍=50個 = 50個×8000円 = 推定被害額 400,000円と試算できます。周囲1200mの牧草地に対し、簡易電気柵のコストがおよそ30万程度(概算2021年現在)と考えると、
わずか一年で元が取れてしまう計算になります。
4-2.”柵に対する意識”が牧場経営に差をつける
このことから、放牧地を囲う「外周柵」は脱柵防止だけでなく、野生動物対策も兼用できる仕様が望ましいでしょう。
目先の経費を抑えるよりも、放牧で生産性を高めるための「投資」と考えることで、将来的には、牧場経営に大きな差を生む可能性が考えられます。
参考商品
その他製品は >>>こちら
5.放牧先進国 ニュージーランドの牧草管理技術
5-1.ライジングプレートメーターを使ったファームウォーク
ライジングプレートメーター(以下RPM)を使って放牧地を歩きながら、牧草の乾物収量の推定値を算出します。
NZでは週に一回、すべての放牧地をこのツールを使って収量調査を行い、以下のようなグラフを作成した上で、放牧と草地管理を行います。
グラフに基づいて、放牧を実施するか、サイレージにするかなど、意思決定を行います。
参考商品
その他製品は >>>こちら
5-2.トッピングで質の高い牧草を生産
牧草を短く管理するために、トッピングといって、早目に掃除刈りを行います。
前述したRPMを活用したグラフ作成などを参考にして、放牧が間に合わないところは草を刈って管理します。
こうすることで、伸びすぎるのを防ぎ、草の品質を高く保つことができます。
5-3.放牧地へのサイレージ給与
春先などまだ草が少ない状態に、サイレージフィーダーという機械を使用して牧草地にサイレージを散布します。
こうすることで、足りない分の草を補うことができます。
日本でも取り組んでいらっしゃる農家さんもおり、ゆっくり撒いて落とすことと、できるだけ牛がいる近くに草を撒くことでサイレージを食べきってもらうよう工夫しているとのことです。
参考商品
その他製品は >>>こちら
参考:サイレージフィーダーについて(動画)
6.まとめ
いかがでしたでしょうか。 以下の3つが、放牧における牧草選びと管理についてのポイントになるでしょう。
- (1)選ぶ・・・気候や環境にあった牧草を選ぶ
- (2)守る・・・牧草の栄養価を守るための野生動物対策を実施する
- (3)管理する・・・RPMなどを活用して草地管理を行う
放牧に関するお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。(TEL:0120-82-4390)