【放牧酪農 コラム】キース・ベタリッジのNZ酪農最新NEWS_Vol,02_あなたの農業ビジネスと環境

ニュージーランド・北海道酪農協力プロジェクトで、コンサルタントとしてアドバイスを行っている「キースベタリッジ氏」による「ニュージーランド酪農最新NEWS」の第二回目の記事です。

第二回目は、「数字を知ることのメリット」と題して、ニュージーランド酪農の最新情報をお届けいたします。



【バックナンバー】
・vol01_キース・ベタリッジのNZ酪農最新NEWS_Vol,01_あなたの農業ビジネスと環境



1.農業においてもデータ活用が大切

 もし、あなたが 小売金物店を経営していれば、店内にある在庫と数量を把握したり、1~2ヶ月先の計画を立てて仕入れを行ったりして、自分の店が利益を上げているのか、
それとも損失を出しているのか(このまま続けていくことが可能なのか)を把握することでしょう。


農業も同じです。

例えば、飼料の予算を立てるには、飼料コンサルタントを、繁殖方針を決定するには家畜コンサルタントを、病気を治すには獣医師を、その年に必要な肥料を決めるには土壌コンサルタントを、
ビジネスモデルが成り立つかどうかを確認するには銀行に相談するでしょう。

以前、3日間ニュージーランド(以下NZ)を訪れた日本人の農業職員は、
「NZの農業はとても簡単で、酪農家がゲートを開けて牛が草を食べ、牛が中に入ってきて搾乳する」と報告されましたが、そんなことはありません。
NZの優秀な酪農家は、正しい決断を下すために、適切なデータが必要だと強調するでしょう。
酪農家にとってどのような方針で酪農を行うかは重要です。

しかし、草地農業は、さまざまなデータを持つことで、週単位、あるいは日単位の経営規模で管理します。
データとは、乳量、牧草の成長率、家畜の成長率、世界の乳製品価格の変動などのことです。



2.北海道の酪農家に必要なもの

2-1.牧草管理について


 酪農家は毎年、生育時期や土壌検査で必要な肥料を把握し、プレートメーターで牧草量と成長速度を測定します。

プレートメーターの数値が変動するのは、各パドックで牛が食べたりサイレージにしたりする牧草の量と、牧草の成長の速さ(80kg DM/haまたは120kg DM/ha/日)を示します。
それらを基に、牧草の品質が高く維持されるように、牛が農場内を移動する放牧ローテーションの長さを決める必要があります。


たとえば、生育が非常に早い春であれば、ローテーションは14日間になるかもしれませんが、生育速度が遅い夏であれば、ローテーションは24日になるかもしれません。
ローテーションが遅いほど牧草の生育期間が長くなり、結果的に牧草の量が多くなります。

生育速度を頻繁に測定することで、酪農家は2週間後にどれだけの牧草が利用可能か、あるいは余っているかを予測することができます。
余るようであれば、1~2パドックを放牧ローテーションから外し、さらに10~14日間生育させてからサイレージ用に刈り取ります。



 私が北海道で目にする牧草サイレージのほとんどは、2~3ヶ月間生育し、緑の葉がなく、種頭がたくさんあるため、非常に品質が低いです。
なんという機会損失でしょうか!

牧草の量が多いときにサイレージを刈るのではなく、品質が高いときに刈るべきです。
そうすれば、緑葉を中心としたマメ科の植物がたくさん生え、種子はほぼなくなります。


さらに、農家はサイレージの一部を粗飼料分析によるTDNテストすることをお勧めします。TDNは55~60%ではなく、75~85%であるべきです。
北海道の非常に優れた放牧酪農家は、この高品質を確保するために年に3回、あるいは4回刈り取ります。
牛はこの品質を好み、農家は余剰サイレージをより高い価格で売ることができるはずです。NZではそうしています!



2-2.牧草の種類


牧草の種類は重要ですが、管理が適切でなければ効果はありません。

牧草の質を30%上げるには、白クローバーと赤クローバーを牧草の15~25%で混ぜるとよいでしょう。
しかし重要なのは、葉が緑色で種子がほとんど見られないうちに放牧することです。
この牧草のTDNは60%ではなく80%であるべきです。
適切な管理ができたら、収穫後に播種する牧草の種類を考えましょう。ただし、良い牧草地には適切な量の肥料や排水が必要であることを忘れないでください。



2-3.動物の成長率

 NZと北海道の酪農家は、若い牛の成長目標を設定する必要があります。

目標は、この時期の牛の体重が成牛の80%になることです。

なぜなら、体重の少ない牛は、正しく成長した牛に比べて、生涯の乳量が減少する可能性が高いからです。
NZでは体重計で体重を測定するのが一般的ですが、胴回りを測定しても構いません。


日本で若い牛を育成するうえでは、高水準の補助飼料の給与と、牛の搾乳期間が1頭あたり2.4産と短いことは大きなコストですが、改善方法はいくつかあります。


・牛のボディコンディションを見直し、受胎率を向上させる


 泌乳ストレス(生産量)を減らすことで、牛のボディコンディションを向上させることができます。受胎率が上がれば、獣医の費用が下がり、牛のストレスが減り、利益が増えます。

・補助飼料の給与量を減らし、牧草の摂取量を増やすことで、牛の負担を減らす


 屋外の環境は非常に好ましく(蹄へのダメージが少なく、乳房炎も少ない)、やがて牛は生涯に3~4回の分娩を行うようになり、代替牛の必要頭数が減るかもしれません。
これがあなたのビジネスモデルではないでしょうか?


多くの成功している放牧酪農家は、北海道でこのことを実証しています。
彼らのサクセスストーリーを真似してみてはどうでしょうか?ファームシステムが持続可能になるよう、今こそ改革を始める時なのです。




原文:キース・ベターリッジ
翻訳:ファームエイジ株式会社 高田
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