持続可能な農業”放牧”から学ぶ~ニュージーランド北海道酪農協力プロジェクト オホーツク地区ディスカッショングループ(放牧勉強会) 実施レポート公開~

​ 2024年9月16日 ニュージーランド政府、フォンテラジャパン株式会社、ファームエイジ株式会社が主体となるニュージーランド北海道酪農協力プロジェクトにて、
放牧酪農に関するセミナーを北海道興部(おこっぺ)町にて開催致しました。当日は農業従事者、関係団体など、多くの方にご参加いただきました。


2022年春よりNZ北海道酪農協力プロジェクトのモニターファームになり、放牧を開始した牧場において、どのように変化していったのかを、
NZコンサルタントと参加者でディスカッションを行いました。


新規就農者も他の地域から多くの方にご参加いただき、充実したセミナーとなりました。

本記事では、現地で行われた内容をご紹介いたします。



1.開催概要

1-1.開催要項

開催日時:2024年9月16日
開催場所:興部町 松岡牧場
参加人数:約30名(酪農家、地元JA職員、普及員、新規就農予定者ほか)
講師:キース・ベタリッジ、Rich Field松岡牧場 松岡洋平
ゲスト :高原牧場 高原弘雄、フォンテラチャイナ ミーガン・ロバートソン



1-2.ディスカッション内容

・フリーストール農家が放牧転換して3年間どのような変化が起こったか
・参加者からの質疑応答
・NZコンサルタントからのアドバイスと総括



2.松岡農場の取組

・搾乳頭数 約80頭、草地面積100ha
・3年前の2021年にプロジェクトに応募
・当時は、牧区割りをせずに10町すべてで放牧をしており、草地に残った部分を掃除刈りしてから再度食べさせていた
・現在は、牧区を1haごとに区切り、集約放牧を開始して2年目
・配合飼料の使用量が減りましたが、乳量はほぼ変わっていない
・まだ改善の余地があるため、皆様からのアドバイスを取り入れたい
・2022年9月と2023年9月 に同様のディスカッショングループを開催



2-1.高原さんから松岡牧場の放牧に対してアドバイス

頻繁に牧場を訪れて観察し、牧区のサイズが大きすぎて放牧圧が適正でなかったため、以下のアドバイスを行いました。


・放牧地の外周にはフェンシングワイヤーを使用し、牧区割りにはピッグティルポールとポリワイヤーを使用する。
 牧草が少ない時は牧区面積を広げ、牧草が多い時は狭めることで、放牧圧を調整できるシステムにする。
・牛の動線を考慮して牧道を作る。初めは簡易的な道を作り、後に業者によって整備する(傾斜や凹凸を均すこと)。
 柵にはフェンシングワイヤーを使用し、ゲートをしっかり設ける。
・配管設置を考慮した上で、水槽の位置を決定する。



3.キースからのアドバイス NZ酪農のノウハウ紹介

・NZは通年放牧が可能で、冬場に畜舎飼いをしない。
・集約放牧技術を用いて、毎日転牧や季節による牧区面積の変更を行う。
・牛が食べる草の量に応じて牧区面積を調整する技術がある。
・NZの一般的な酪農規模は、平均450頭搾乳/面積200町。
・日本でも集約放牧技術の考え方を取り入れることが可能であり、成果を上げている農家もいる。
・放牧により所得を確保できる可能性がある。
・得た情報をすぐに実行できるとは限らないが、アドバイザーやコンサルタントの助言を受けることが成功の鍵となる。
・乳生産量だけでなく、農家に最大所得を残すことが重要視されている。
・松岡さんの例では、餌代が減少し、乳量が維持されている。



4.フィールドでの実習・ディスカッション

4-1.土壌の違いを見てみよう

・ABCの3か所に分かれて観察、参加者どうしでディスカッション
・草の根の張りや、ミミズの有無、スコップが刺さりやすいかを確認


~キースからのコメント~

土壌分析をしなくともこのように土壌を見ることで違いが分かり価値を知ることができる。
今回の土壌と比較して次の改善へのステップとしていただけたらと思う。



4-2.草地を見てみよう

・1haあたりの乾物量は何kgある草地でしょうか
・酪農家から見て草の品質はどうか


~キースからのコメント~

クローバーは栄養価が高く、根についている根粒菌は空気中の窒素を吸着して土に取り込む重要な役割がある。
掃除狩りをして草地管理した結果、クローバーが増えていて草地として栄養価が高くなっている印象がある。
牧区割に必要なことは、水槽とポリパイプという配管設置である。


5.全体を通じて キースからのコメント

 今回も多くの方と放牧の今後について、意見を交わすことができました。

NZと日本の酪農を比較すると、相違点や類似点が見られます。NZでは通年放牧が可能であり、冬場に畜舎飼いをすることはありません。
集約放牧技術を基盤として、毎日転牧するだけでなく、季節によって牧区面積を変更し、ローテーションの日数を調整します。
NZの酪農は、牛が食べる草の量に応じて必要な牧区面積を決定する技術が重視されています。
NZでは平均450頭搾乳し、200haの面積で管理していますが、この技術は規模に関わらず、日本の酪農でも応用できるものです。放牧によって所得を確保できると考えています。



6.次回の開催予定

 詳細は、ウェブサイトまたはSNS(Twitterインスタグラム)などで発信してまいりますので、お待ちください。
情報を受け取りたい方は、お手数ですが弊社まで直接お問合せください。



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