【放牧酪農 コラム】キース・ベタリッジのNZ酪農最新NEWS_Vol,03 ストレスとメンタルヘルス

ニュージーランド(以下NZ)の農家には、こんな言葉がある。
「自分自身の面倒を見なければ、家族や農場の面倒を見られない。
自分に問題があることを認識し、その解決に向けて行動を起こすことが大切だ。」




” 自己充足 セルフフィリング ”とは、自分の世話をすること。
もし自分の生活がストレスだらけだと、子どもたちは農場を継ぎたくないかもしれない。

農業は趣味であり、ビジネスでもある。



【バックナンバー】


・vol01_あなたの農業ビジネスと環境
・Vol02_数字を知ることのメリット



1.農家の福祉を考える

 酪農は多くの人にとって楽しい仕事ですが、時には状況が悪くなり、牧場や家族、友達、さらには銀行との関係で正しい判断ができなくなることもあります。
これは北海道の酪農家だけの問題ではなく、世界中の農家が直面する問題です。


1-1.農家が直面する問題

以下は主な問題点です

・乳価が上がらない
・燃料代や資材費などのコスト上昇
・牛群に病気が広がる
・牛の繁殖がうまくいかない
・銀行への返済
・天候の影響(牧草や作物が育ちにくい)
・機械の故障
・家族の不調



 これらの問題はNZの農家でも同じように起こっている。

多くの農家はこれらを乗り越えて、すぐに好調な時期を取り戻すが、どう対処すればよいのか分からない人もいる。
多くの場合、こうした問題を誰にも話さずに抱え込み、責任を感じて友達との交流も減り、農場を離れたくないと思ってしまう。

しかし、正しい解決策を見つけるためには、誰かに助けてもらうことも大切である。
NZでは、農家同士の近所付き合いがよく、農業経営について率直に話すことが一般的だ。

コンサルタントを含むファーム・ディスカッション・グループでは、成功や問題点をオープンに話し合うことができる。
もし「元気がないな」と感じる農家がいたら、その理由が気になるかもしれない。

しかし、ただ心配して話すだけでは、問題は解決しない。



1-2.酪農家を支援するさまざまな仕組み

 積極的に行動することが大切だ。

あなたが手を貸すことができるかもしれないし、医師やカウンセラーがサポートしてくれるかもしれない。
しかし、何もしないことが一番間違いだ。
NZでは農家をサポートするために支援グループが作られている。
その一つに、「ビッグ・デイ・アウト」というイベントがあり、地元の農家20~30組が集まって、農場から離れリラックスする時間を持つことができる。
このイベントは一見無駄に思えるかもしれないが、実はとても重要な時間だ。

農場を離れることが久しぶりになるかもしれないが、リラックスした雰囲気の中で友達と食事をしながら、抱えている問題を話すことで、自分が一人ではないと感じることができる。

問題は他の人も経験していることがよくあり、みんなで考えれば解決の手がかりが見つかることが多い。



2.アニマルウェルフェア

2-1.日本で見たアニマルウェルフェアの現状

 日本の多くの牧場でつなぎ牛舎が使われていることに驚いた。

牛は冷たく濡れたコンクリートの床に立ち、立ったり座ったりすることしかできない。
しかし、最近の牛舎では、牛が歩き回ったり、他の動物と干渉されない場所で休むことができるようになっている。

これは大きな進歩だ。しかし、1年の6~7ヶ月は放牧され、濃厚飼料を与えるパーラーまで散歩できる牛舎は、さらに良い進歩だ。
北海道では、少数の農家が1年中放牧をしており、これを「ウィンター・ゼロ放牧」と呼んでいる。
ある酪農家は、北海道の平均利益の3倍を上げている。冬でも多くの野生動物が外で生活しているため、冬の草がゼロでも牛の福祉は悪くないかもしれない。



2-2.アニマルウェルフェアがもたらす利益

 アニマルウェルフェア(動物福祉)は牛乳の価値に大きく関わっている。
もし牛乳が輸出されたり、都市部の人々が農場の動物福祉に問題があることを知ると、牛乳の価値を保つのが難しくなる可能性がある。

牛の生活環境が良くなれば、乳量が増え、病気が減り、利益が増えることが分かっている。良い環境で育てられた牛は、その健康にも良い影響を与える。

人間の福祉と動物の福祉は密接に関わっている。なぜなら、具合の悪い酪農家は、牛の具合も悪くなることが多いからだ。



原文:キース・ベターリッジ
翻訳:ファームエイジ株式会社 高田
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