【開催レポート】NZ 北海道 酪農協力プロジェクト 第3回 放牧酪農オンライン交流会

2023年2/22(水)、ニュージーランド北海道酪農協力プロジェクトによる放牧酪農オンライン交流会を実施いたしました。
酪農の方や新規就農希望の方、農業関係者など全国から総勢22名の方にご参加いただきました。
今回のテーマは「集約放牧」についてでした。
放牧を実践するにあたっての数字管理など、放牧を実際に行っていくうえでの具体的なポイントについて、ディスカッションされました。
本記事の中では、交流会でのアドバイスや、Q&Aを抜粋してご紹介します。 放牧で困っていることがある方、これから就農・放牧したい方にご参考いただけると幸いです。



1.当日の流れ

・グループコミュニケーション(アイスブレイク)
・高原さんと吉川さんから 放牧と数字管理について
・キースからのコメント
・まとめ



2.放牧と数字管理について

2-1.高原さん

・年間出荷乳量は260トン 1頭当たりの乳量7300キロ
・ライジングプレートメーターで草の乾物収量を測定
・放牧前後で測定 放牧地で乾物収量16~18kgぐらい食べさせるよう意識
・サイレージの品質を重視 天候などなるべく早く見極め、水分量は60%以上を意識
・多少短くても、早めに刈ることを意識。伸びすぎると草の品質が下がる 
・最大乳量は変わっていないが、配合飼料の量が減少
 特に餌代が高騰しているのでこういう部分は経営に効いてくると思う

・現在は、濃厚飼料は今は1日最大6kg 最小が2kg程度
・現在の乳飼比は13%程度だが、
 11~12%ぐらいが牛の発情や生理的にも無理なくマッチした数字に感じる
ライジングプレートなどで色んな部分の数値を把握するようにしているが、
 鵜呑みにはしてはいけない
 実際に自分の足で草地を歩いてみて、草の様子や採食後の草地を確認することが重要




2-2.吉川さん

・年間出荷乳量が250トン 1頭あたりが5000キロ弱ぐらい
・放牧に必要な数値として、乾物重量(kgDM/ha)が挙げられる
・放牧の数値を話し合う上で、haあたりの乾物重量など共通言語が必要と感じる
・草の伸びが悪い時期には輪換放牧によって牛の採草量を制限
 平均草量が1900-2000kgDM/haより下がってしまうと草の再生にかかわる
 25年前にNZにいたころは輪換日数は14-21日の間といわれていた
・放牧前後の草の量が大切 NZの酪農家は数値をもとに互いに話し合っている
・終牧後に掃除刈することで、食べ残しや来春の草の品質を高めることができる
・バランスデイというのは牛の食べる量と草の量が一致した日
 それが24日であればそれを目指して牧区を1周できるようにする
・大切なのが、日々めまぐるしく放牧地を変えていくこと
 キースも言っていた通り、放牧酪農家は判断をのんびりしているわけにはいきません

・ライジングプレートメーターを使って出た草量をフィードウェッジにすることで、
 バランスデイ以後にフィードウェッジを見ながら草を刈るのか、何をなるのか判断する ・若い人たちが酪農をやりたくても、やめている人がいる
 各地区で放牧についてきちんと指導できる放牧普及員の存在が必要が不可欠



3.質疑応答

Q.プロジェクトでやってその後経過したなかで、微調整した部分や新たに気付いたポイントはありますか?
A:高原さん)配合の価格が高騰しているので、配合を与えて赤字にならないよう意識しています。今の価格帯だと、最大で6キロ。
それ以上を与えると赤字だったり、利益が少なくなります。
そのうえで、もう少し絞りたいとなったときに、草地やサイレージの品質をどうするか考えるようにしています。



Q.放牧をしながら配合飼料を減らしていった場合、どのタイミングで減らす決断をしましたか?
A:高原さん)ウチの場合は、乳成分やサイレージの品質も毎年分析してもらって、その都度、それにあった飼料設計をもらっています。
実際に食べているラップサイレージの重量や残滓率、食べた粗飼料の量など細かいところまで測りました。
乳成分も見ながら、それで乳量も変わらなければ、じゃあ次はこの量でやってみようかなという感じで、
3ヵ月とか短い期間で試しては変えて、というのをやってきました。
あとはボディコンディションスコアとか爪も見たりしていました。



Q.牛の飲水量は把握されていますか?
A:高原さん)水をきれいに保つことは意識しているが、どれぐらい飲んでるかまでは把握していない。
水槽はどの牧区にも、一番近いところに設置しています。



Q.今の放牧管理に+配合を与えれば乳量アップするとなれば、どう選択されますか?
A:高原さん)うちは1キロ増やしました。なので6000から7000キロになりました
それは、従業員が増えたのでその人の分捻出しなきゃいけないということで
マイナスにならないよう、ギリギリの数字に増やしました。


A:吉川さん)私は新規就農したころが一番配合飼料が少なかったですね。
今は放牧ができない冬に行くにつれ、配合飼料を増やしています。
ボディコンディションを見ながらですが、だいたい4-5キロぐらいでしょうか。
痩せすぎると分娩とか繁殖にかかわってきてしまいますので。



Q.舎飼いから放牧に切り替えたい場合、押さえておくべき数字はありますか?
A:高原さん)色んな数字を拾う必要があると思います。
自分も、スタートのころに管理していた数字と今の管理している数字は違います。
いろんなチャレンジをしながら変えてきているので。常にいろんなデータを拾えるようにした方が良いと思います。
あとは、変化させていくことに対するメンタルの強さも必要だと思います。



A:吉川さん)数字ではないんですが、放牧に切り替えただけでも牛が長生きできるようになりますので、
それだけでもまずはプラスになると思います。
頭数に対して面積が小さすぎると、泥濘化を引き起こし、草が生えなくなってしまいます。
面積が小さい場合は、雨の日は放牧を控えるなどの配慮も必要になります。
あと、放牧をすれば基本的に草地は良くなっていきます。
もし、放牧して草地が悪くなっていくようなことがあれば、放牧の仕方が間違っていると判断したほうが良いです。



4.NZコンサルタント キースからコメント

・自身の中で数値を把握し、管理していくことが最初のステップに
・数値で把握できていれば、草の成長や品質など、何が収益につながったのかを数字で理解できるようになる
・餌を上げ続ければ乳量と所得は伸びていくが、ある点を境に、所得は伸びなくなってくる
 こうしたデータに基づいて、自分の利益管理をどのようにしていくかがポイントになる
・NZの酪農家においても、必ずしも最大乳量が最大所得になるかは、定かではない
・NZのコンサルタントはKPIという指標を作成し、定期的に見直す。こうした数字を把握し、農家に利益が残るよう提案する
・限界利益を知ることが大切 限界利益 収入>コスト/kgミルク
・NZでもグローバル市場の変化などの影響を受けたが、放牧主体の農家はもともとのコストが低いので、ある程度利益を保つことができた
・日本は外部飼料に依存しているので、非常にリスクが高い
・乳生産主要4ヵ国のうち、グラスリッチ(放牧主体)とグラスプア(非 放牧主体)を調べると、コストが倍近く変わってくることがわかっている



5.まとめ

・吉川さんの話にもあった通り、放牧酪農家同士の共通言語が必要
(ヘクタール当たりの乾物重量や、乳飼比、自給飼料、与えている配合飼料の量など)
・数値管理することで、状況把握や他の農場との比較、改善などがしやすくなる
・メンタル面のコントロールも重要。

・地域の協力であったり、支援する普及員や行政を含めて情報共有されていくべき
・今後も引き続き、コミュニケーションの機会を作りながら持続可能な畜産について考えていきたい



6.次回の予定について

・3月27日を予定
・ゲストスピーカーは、 ニュージーランドでシェアミルカーをやってる和田さんを予定
・詳細はファームエイジウェブサイトやSNS(Instagram、Twitter など)で発信予定
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