放牧酪農は環境にいいの?
今回のテーマは「放牧酪農と環境」です。
広い青空の下で、牛がのんびりと牧草を食べている。放牧が行われている牧場では、そんなのどかで牧歌的な光景がよく見られます。
なんとも微笑ましいものです。
では、その放牧を「環境負荷」というテーマから改めて見つめなおすと、一体どのような側面が見えてくるでしょうか。
目次
放牧が環境にもたらすメリット
舎飼いから放牧へと切り替えることで、大きく分けて以下の三つのメリットが生まれます。
1.機械による物の運搬が減り、二酸化炭素の排出が抑えられる
放牧では動物が自分の脚で歩き、自分でエサを食べ、自分で草地に糞尿を落としながら移動します。そのため、飼料を運んだり糞尿を集積させたりするためのトラクター移動が不要になり、機械から排出される CO2の量が削減 されます。
近年高騰している燃料費も抑えられますので、お財布にも優しいですね。
2.穀物の輸入需要を減らし、穀物の生産・輸入にかかる資源の消費を減らせる
これは、1と比べてもう少しスケールの大きいものとなります。
日本は、その穀物自給率の低さゆえに、海外から大量の飼料穀物を輸入しています。
穀物を育てるには大量の地下水をくみ上げて灌漑を行う必要があり、また、タンカー・トラックなどで国境を越えた長距離輸送を行う際には大量のエネルギーを消費します。
ここで、放牧による酪農を行うとどうなるでしょう。飼料は近隣の土地の草が主体ですから、外部から購入する輸入飼料の量はもちろん減ります。その結果、これまで消費され続けていた水やエネルギーなどの資源を守ることができるのです。
(参考1:世界の粗粒穀物輸入量ランキング 世界の粗粒穀物生産量ランキング)(参考2:日本は、実は莫大な量の水を輸入している | 健康)
3.草地が管理され、大気中の炭素が地中に固定されるようになる
3は、放牧を行うことそのものというよりは、もともと存在している草地(あるいは耕作放棄地など)がきちんと活用されるようになることが重要です。
適切に管理された土は、まんべんなく生えそろった牧草たちや動物の糞尿の力も借りて、炭素をどんどん蓄えられる天然の貯蔵庫へと変わっていきます。
有機物を多く含むようになった豊かな土は、軽度の干ばつ、水害にも耐えうる柔軟な構造を持ちます。
目先の1年や2年ではなく、長期的な恵みをもたらしてくれる救世主です。
農業に関わるということは、「土」が持つ高いポテンシャルをいかに引き出せるか、という挑戦でもあります。この探求に終わりはありません。
デメリット
同じ場所で動物を放し続けると、糞尿に含まれる窒素分が過剰に土地に蓄積してしまいます。
過剰な窒素は牧草の生育に影響を及ぼすほか、地下水や川に流れ出して水質汚染を引き起こすこともあります。
また、動物は食べる草を選り好みします。そのため、草地があまりに広いと、好まれる草とそうでない草の伸び方に大きく差が生まれてまばらになり、土が荒れる原因となってしまいます。
これらの環境負荷のリスクを最低限にとどめるには、農地を電気柵で小さく区切り、草の伸び具合を見ながら動物を移動させていく手法が有効です。
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終わりに
放牧と環境の結びつき、イメージしていただけたでしょうか?
他にも放牧と土中の微生物の関係、それによって生まれる豊かな生態系など、着目していただきたいポイントはたくさんあります。
それについてはまたいずれ、他の記事にてご紹介したいと思います。
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