【雪 電気柵】積雪地でも電気柵は使える? 注意すべきポイントと豪雪地帯での導入事例をご紹介

日本における豪雪地帯は、日本全体の面積の51%程度といわれており、ほぼ半分の地域が積雪を伴う環境にあります。
(引用:(参考資料)豪雪地帯の現状 – 国土交通省)


そんな中、稀に以下のようなお問合せを受けます。
「雪が降っても電気柵は使える?」
「真冬でも電気柵を使いたいけど、どう設置すれば良い?」


この記事では、電気柵の仕組みに関する基礎的な知識から、積雪地での設置・管理方法や導入事例についてご紹介いたします。



1.電気柵の仕組み

まずは、電気柵の仕組みからご紹介します。


電気柵は、野生動物対策として幅広く利用されており、中山間地の田畑や牧場の周囲でよく見かけます。

電気柵の仕組みとして、 動物が電気柵ワイヤーに触れることで、電気が動物の体を通って地面に流れ、アースから本器へ流れる電気柵の回路が成立します。
これにより強いショックに驚いた動物は、その後心理的に柵に近寄りにくくなります。


参考記事

・【間違えない・失敗しないため】電気柵の設置方法とワンポイントアドバイス(動画あり)


2.積雪地で電気柵を使用するとどうなる?

 前項をふまえ、積雪地で電気柵を設置すると、どのようなことが起きるか、主なポイントをご説明します。


1-1.アースの効果が薄れれてしまう

 特に、豪雪地域のように何十センチも降り積もると、地面の上に雪の層ができます。
また、冬に氷点下まで気温が下がる寒冷地では、積雪が少なくても土壌凍結(土の中にある水分が凍ること)を起こします。

このような現象が起こると、電気柵におけるアースの効果が薄れてしまいます。
そのため、ワイヤーに適切な電気が流れていても、動物に与えるショックが小さくなり、侵入や脱柵を許してしまう可能性があります。


参考記事

・【電気柵 アース】アースは必要?仕組みやよくあるお問合せをご紹介

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1-2.柵の破損につながる

 電気柵の支柱は、動物が衝突した際の衝撃を柵全体で緩和するため、しなりやすい構造であることが重要です。
しかし、積雪が多い地域では、雪解け時に一気に負荷がかかることで支柱が折れたり、ワイヤーが切れたりする恐れがあります。
そのため、多雪・豪雪地域では、電気柵の支柱やワイヤーを回収することが基本となります。



1-3.ソーラーパネルの効率が下がる

 電気柵の電源にバッテリーとソーラーパネルを併用して使われている方は多いと思います。
パネル面に雪が積もると太陽光を受けることができず、発電効率が下がってしまいます。
長期間放置するとバッテリーがなくなってしまう恐れがあります。



2.積雪地における電気柵設置事例

 前述した通り、積雪地で電気柵を使用することは容易ではありません。
使用する場合は、積雪量や環境に応じた設置・管理方法が必要になります。

ただ、それでも「野生動物被害を防ぐためにどうしても電気柵を設置したい」「金網やフェンスでは高額になる・・・費用を抑えたい」といった切実なお声もいただきます。

そのような場合、「恒久電気柵(こうきゅうでんきさく)」があります。



2-1.恒久電気柵(こうきゅうでんきさく)とは?

 耐久性に優れており、フェンシングワイヤー(高張力鋼線)を使用した恒久柵は20年以上設置されている事例もあります。

また、インサルウッド(絶縁性の高い木)のバトンを使用することで農村らしい、景観的にも優れたフェンスに仕上がります。
積雪の多い地域では倒伏することで、破損を防ぎ、春先に柵上げをするだけで簡単に管理ができます。

参考記事

・恒久柵(こうきゅうさく)


2-2.事例|鹿対策電気柵

 北海道内での設置事例です。

地域一帯が山に囲まれており、シカによる農作物被害が急増している状況でした。
さらに、積雪も2m近く降る豪雪地帯で、農家さんが個別に電気柵を設置すると膨大な費用がかかるため、地域一帯を囲うように恒久電気柵を設置しています。


 ここでは、インサルウッドではなくグラスファイバー製の「グラファイ ポール」を採用しています。
グラファイ ポールはインサルウッドよりも細く・軽量で安価なため、よりコストを下げるだけでなく、
なるべく地域の農家さん同士で維持管理していくための手間を軽減しています。
冬季間は柵全体を倒伏して、春先になると再び柵を立ち上げることで、豪雪による破損を防いでいます。


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・参考記事

簡易恒久柵(かんいこうきゅうさく)


2-3.事例|牛用電気柵(放牧)

 弊社実験農場(デモファーム)での事例です。

毎年牛や羊などの家畜を導入しながら、新しい電気柵の設置試験や社内・社外研修の場として活用しています。
 約10haの敷地に恒久柵を設置しています。毎年春にスタッフが柵上げ(倒伏した柵を起こすこと)を行い、雪が降る前に倒伏しています。
20年近く使用していますが、補修するところは毎年ごく一部で、主にその年に入った新人スタッフが研修として、補修・管理しています。




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2-4.その他事例|バイパスワイヤーを使った事例

 北海道内の事例です。鹿対策として導入いただきました。

さきほどの恒久柵と違う点として、まず、支柱は一度設置したら回収しなくて済むよう単管に。
電気柵ワイヤーは「バイパスワイヤー」を使用しました。

バイパスワイヤーは鉄線のワイヤーを編んだ電気柵ワイヤーです。
恒久柵で使用するフェンシングワイヤーほど固くなく、柔軟性があるため施工がしやすいワイヤーです。


恒久柵のように、積雪による破損を防ぐために倒伏を行えるよう設計しました。
雪が降る前に、緊張を弛めてワイヤーを地面に倒します。

雪が解けたら、緊張をかけてワイヤーを再度ピンと張ります。
このようにワイヤーを「回収」するのではなく「倒伏」 することで、積雪による破損を防ぐことができます。


ポリワイヤーを使う一般的な「簡易電気柵」よりもコスト面がかかってしまいますが、
豪雪地帯ではこのような電気柵の張り方も可能です。



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3.まとめ

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 いかがでしょうか?

積雪地での電気柵には留意すべき点がいくつかあります。
ただ、環境にあった設計や管理を行うことで、対応できる場合があります。
お客様の環境にあわせた設計をアドバイスいたしますので、お気軽にご相談ください。


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